「電池が切れるまで」(すずらんの会編)

明日の活力にしています

「電池が切れるまで」(すずらんの会編)
 角川文庫

何度読んでも
涙が溢れて止まりません。
乗り物の中など、
周囲に人がいるときには
絶対読むことのできない本です。

本書を編集した「すずらんの会」は、
長野県立こども病院で
治療を受けた子どもや
治療中の子どもたちの保護者の会です。
ここに入院してくる子どもたちは、
いわゆる重度の患者です。
いつ終わるとも知れない
長い入院生活です。
無事に退院できるのであれば
いいのですが、
そこで亡くなってしまう子どもたちも
少なからずいるのでしょう。
まだ幼い中、
過酷な運命を背負いながらも、
周囲への感謝や
いたわりの心を持ち続けながら
懸命に生きる子どもたちの声が、
本書には収録されています。

私の長男も難病を患い、
10歳までの間に十数回
入退院を繰り返しました。
東北に住んでいるのですが、
東京の病院に入院したときも
何度かありました。
長男と妻が東京へ、
私と次男が家に残り、
家族が二つに別れて生活していた時期に
出会ったのが本書です。
ああ、自分だけじゃないんだ。
大変な思いをしている子どもや家族が、
たくさんいるんだ。
みんな頑張ってるんだ…。
たくさんの元気を
もらうことができました。

以来、
自分自身が何かに行き詰ったとき、
心が窮屈になったとき、
密かに読み返し、
明日の活力にしています。
そして、私自身も、
この本から受け取った
「思い」や「力」や「エネルギー」を、
誰かに還元していかなければ
いけないのだという
使命感に駆られてくるのです。
幸い、私は子どもたちを相手にする
職業に就いています。
ときどき自分を振り返って、
自分は子どもたちに
何を残す事ができているのだろうと
考えます。

ある人から言われました。
子どもに病や障害があると
親は心底悩むけれども、
それでも子どもを持てない人、
失った人からすれば、
羨ましいことなのだと。

さて、教育現場にいると
感じることがあります。
現代の(健康な)子どもたちの
「心のひ弱さ」です。
ささいなことで心が折れる。
つまらないことで立ち直れなくなる。
自分自身で努力せずにすぐ諦める。
ときどき新聞で
子どもの自殺のニュースを見るたびに
やるせない気持ちになります。
本書をぜひ、体は丈夫でありながらも
心が虚弱な子どもたちに、
無理にでも読ませたいと思う
今日この頃です。

(2020.3.12)

PezibearによるPixabayからの画像

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